資産運用とは、保有するお金を預貯金、債券、株式、投資信託などに配分し、目的に合わせて管理することです。預貯金も広い意味では資産運用に含まれますが、一般には、株式や投資信託などを利用して中長期的な資産形成を目指す意味で使われています。
預貯金と投資には、それぞれ異なる役割があります。預貯金は日々の生活や急な支出に対応する資金であり、投資は当面使う予定のないお金を将来に向けて運用する方法です。
現金・預貯金の重要性
預貯金を減らして投資額を増やせば、期待できる収益は大きくなるかもしれません。その分、病気や失業、家電の故障などが重なったときに、家計を支える現金が足りなくなる可能性も高まります。資産運用では、投資額を増やすことよりも、生活を維持できる現金を残すことを先に考えます。
当サイトでは、少なくとも半年分の生活費は現金・預貯金として残し、それを超える余剰資金の範囲で投資を行うのがよいと考えます。
投資信託や株式は、将来に向けて資産を育てる方法として活用できます。一方、価格が下がっている時期に生活費が必要になると、損失が出た状態で売却しなければならない可能性があります。預貯金と投資の役割を分け、家計を支える現金を確保したうえで資産運用を始めることが重要になります。
預貯金と投資の役割は異なる
| 比較項目 | 預貯金 | 株式・投資信託などへの投資 |
|---|---|---|
| 主な役割 | 生活費や近く使う資金を保管する | 中長期的な資産形成を目指す |
| 元本の扱い | 通常は預けた金額が維持される | 価格変動によって元本割れする可能性がある |
| 収益 | 預金金利に応じた利息 | 値上がり益、配当金、分配金など |
| 現金化 | 普通預金は必要なときに引き出せる | 売却時の価格によって受取額が変わり、入金まで日数を要する商品もある |
| 適する資金 | 生活費、緊急予備資金、数年以内に使う資金 | 当面使う予定がなく、値下がりしても保有を続けられる資金 |
預貯金の利息は限られますが、必要なときに使えること自体に大きな価値があります。生活費や急な支出に充てる資金は、収益性ではなく、安全性と引き出しやすさを優先して置いておく必要があります。
株式や投資信託は、預貯金を上回る収益を期待できる一方、必要になった時点の価格が購入時を下回っていることもあります。売却時期を選べる資金で投資していれば、価格が回復するまで保有を続けるという判断も可能です。
半年分の生活費を現金で確保する
資産運用を始める前に、少なくとも半年分の生活費を現金・預貯金として確保することをおすすめします。ここでいう生活費は、普段使う金額をそのまま6倍するのではなく、収入が途絶えた場合にも支払いが必要となる費用を基準に計算します。
| 生活費に含める主な項目 | 具体例 |
|---|---|
| 住居費 | 家賃、住宅ローン、管理費、修繕積立金 |
| 食費 | 日常的な食料品や最低限の外食費 |
| 水道光熱費 | 電気、ガス、水道 |
| 通信費 | 携帯電話、インターネット |
| 保険料 | 生命保険、医療保険、自動車保険など |
| 税金・社会保険料 | 住民税、国民健康保険料、国民年金保険料など |
| 返済 | 住宅ローン、自動車ローン、奨学金など |
| その他の固定支出 | 医療費、通勤費、子どもの教育費など |
例えば、毎月の生活維持費が25万円であれば、半年分は150万円です。この150万円は投資に回さず、普通預金など必要なときに引き出せる場所へ残します。
賞与や残業代を含まなければ家計が成り立たない場合は、通常月の支出額だけではなく、年間支出を12か月で割った金額を基準にすると実態に近づきます。自動車税、固定資産税、保険料の年払いなども月割りで加えておくと、半年分の資金が不足する事態を避けられます。
半年分の生活費を確保する理由
半年分という基準は、資産運用で利益を得るための数字ではなく、家計が立て直されるまでの時間を確保するためのものです。収入が減った場合でも、すぐに投資商品を売却せず、転職活動や支出の見直しを進める期間を持てます。
家計では、複数の支出が同じ時期に重なることもあります。収入が減った時期に、医療費、住宅設備の修理、車の故障などが発生すれば、1か月分や2か月分の預貯金では足りない可能性があります。
投資資産を保有していても、その時点で現金があるとは限りません。評価額が大きく下がっていれば、売却によって損失が確定します。十分な現金を持っていれば、生活上の事情と相場の動きを切り離して判断できます。
ただ、収入の安定性や家族構成によっては、さらに多くの現金を残しておくほうがよいこともあります。
| 家計の状況 | 現金を多めに確保する理由 |
|---|---|
| 自営業者・フリーランス | 月ごとの収入差が大きく、病気や取引先の事情で収入が減る可能性がある |
| 歩合給や賞与の割合が高い会社員 | 毎月の手取り額が一定ではなく、業績によって収入が変動する |
| 転職や独立を予定している | 次の収入が安定するまで期間を要する可能性がある |
| 扶養家族がいる | 収入が減っても、家族の生活費や教育費は継続して必要になる |
| 住宅や自動車を所有している | 修理や買い替えなど、まとまった支出が発生する可能性がある |
| 近く大きな支出を予定している | 住宅購入、引っ越し、出産、進学などに使う資金を別に確保する必要がある |
半年分の生活費を確保したからといって、それを超える預貯金をすべて投資へ回す必要はありません。数年以内に使う予定があるお金も、生活防衛用の資金とは別に現金で残します。
投資に回せる余剰資金とは
余剰資金とは、現在の生活費を支払い、半年分の生活費を確保し、近い将来に予定している支出を差し引いた後に残るお金です。単に普通預金口座に残っている金額を指すものではありません。
| 資金の区分 | 主な用途 | 基本的な置き場所 |
|---|---|---|
| 日常生活に使う資金 | 家賃、食費、公共料金、カード利用代金など | 普通預金 |
| 半年分の生活費 | 失業、休業、病気、収入減少への備え | 普通預金など、すぐに引き出せる預貯金 |
| 近い将来に使う資金 | 住宅、教育、引っ越し、車、家電の買い替えなど | 預貯金など価格変動を避けられる金融商品 |
| 余剰資金 | 当面使う予定のない中長期の資金 | 株式、債券、投資信託など |
例えば、預貯金が300万円あっても、半年分の生活費が150万円、2年以内に使う予定の資金が100万円であれば、投資に回せる余剰資金は最大で50万円です。預貯金の残高だけを基準に投資額を決めると、必要な資金まで値動きにさらすことになります。
まとまった余剰資金がなくても積立は始められる
半年分の生活費をまだ確保できていない段階では、現金の積み立てを優先してみてください。毎月の余裕額をすべて投資へ回すのではなく、生活費の備えが半年分に達するまで預貯金を増やす方法が、このサイトの基本的な考え方です。
資産運用の経験を積む目的で少額の積立を始める場合も、現金の準備を止めないことが前提になります。例えば、毎月3万円の余裕があるなら、2万5,000円を預貯金、5,000円を投資信託の積立に充てるなど、現金を優先しながら少額で始める方法も考えられます。
半年分の生活費が確保できた後は、毎月の余裕額のうち、今後数年以内に使う予定がない部分を投資へ振り分けます。積立額は、相場が下落した時期にも生活費を取り崩さず継続できる水準に設定します。
生活費と投資資金は口座を分ける
日常生活用の口座、半年分の生活費を置く口座、投資に使う証券口座を分けると、それぞれの資金の役割が明確になります。生活費と余剰資金が同じ口座に入っていると、どこまで投資に回せるのか分からなくなるためです。
| 口座 | 主な役割 |
|---|---|
| 生活費用口座 | 給与の受け取り、公共料金、家賃、カード代金などの日常的な入出金 |
| 緊急予備資金用口座 | 半年分の生活費を保管し、通常の支出では使わない |
| 証券口座 | 余剰資金を使って株式や投資信託などを購入する |
緊急予備資金用の口座は、日常的に使う口座とは分けつつ、必要なときに引き出せる金融機関へ置くのが基本です。金利を得るために、値動きのある商品や中途解約条件の厳しい商品へ移すと、緊急時の資金として使えない可能性があります。
NISAを利用しても投資は余剰資金で行う
NISAは、対象となる株式や投資信託から得た利益を非課税にする制度です。税制面の利点はありますが、購入した金融商品の価格変動がなくなるわけではありません。
年間の投資枠を使い切るために、半年分の生活費や近く使う予定のある資金までNISA口座へ移す必要はありません。非課税枠が残っていても、余剰資金がなければ投資を見送るという判断になります。
NISAの利用額は制度上の上限から決めるのではなく、家計に残す現金を確保した後の余剰資金から決めます。毎年投資できる金額が変わっても、家計を支える現金を優先する方針は変わりません。
投資を始める前に決めること
半年分の生活費と近い将来に使う資金を確保できたら、余剰資金について運用の目的を決めます。目的が明確になると、運用期間、積立額、受け入れる値動きの範囲を具体化できます。
| 決める項目 | 考える内容 |
|---|---|
| 運用目的 | 老後資金、将来の選択肢を増やす資金など、何のために運用するか |
| 運用期間 | 何年後に使う予定か、途中で引き出す必要がないか |
| 積立額 | 生活費や現金の積み立てを続けながら、毎月いくら投資できるか |
| 値下がりの範囲 | 評価額が下がったときに、家計と心理の両面でどこまで受け入れられるか |
| 資産配分 | 預貯金、債券、株式、投資信託などへどのように配分するか |
高い収益を求めるほど、価格変動も大きくなる傾向があります。必要な金額から高い利回りを設定するのではなく、余剰資金の範囲と受け入れられる値動きを基準に運用方法を決めます。
資産運用は現金を残すところから始まる
資産運用では、株式や投資信託を購入することが最初の手順になるとは限りません。日常生活費を確保し、少なくとも半年分の生活費を現金・預貯金として残し、近い将来に使う資金を分けることが先になります。
これらを差し引いた余剰資金で投資を行えば、相場が下落した時期にも、生活費のために投資商品を売却する事態を避けられます。運用資産の値動きと日々の暮らしを切り離すためにも、十分な現金を持つことが資産運用の土台です。
