高齢化が進むなか、認知症の方と関わる機会は介護の現場でもますます増えています。介護に関わる方が専門的な知識と実践力を高めるために設けられているのが「認知症介護実践者研修」と「認知症介護実践リーダー研修」です。
これらの研修は、認知症ケアの質を高め、チーム内でのリーダーシップを発揮できる人材を育成することを目的としています。
認知症介護実践者研修とは
この研修は、介護職として認知症ケアに日常的に関わる人に向けたものです。認知症の症状や進行の過程、BPSD(行動・心理症状)と呼ばれる問題行動への対応方法などを中心に学びます。また、本人の意思や尊厳を尊重した「本人中心のケア」の考え方を習得することで、より個別性のある支援の実践力を高めることが目指されています。
内容は、座学による講義と実践報告を交えた振り返りで構成されており、受講者は自身の現場での支援を見直し、改善策を考える機会を持つことになります。研修期間はおおむね30~40時間で、4~5日程度の日程で実施されるのが一般的です。
対象となるのは、認知症介護基礎研修を修了した人や、すでに認知症のある利用者のケアに従事している介護職員です。
目的
- 認知症に関する基礎から応用までを体系的に学ぶ
- 個々の利用者に合わせた「個別ケア」の実践力を高める
- チーム内でのケアの質の向上につなげる
主な内容
- 認知症の症状や進行過程の理解
- BPSD(行動・心理症状)への対応
- 本人中心のケアの考え方
- 家族支援・地域との連携
- 実践報告とケアの振り返り
対象者
- 認知症介護基礎研修修了者
- 認知症高齢者のケアに従事している介護職員
期間
-
約30〜40時間(4〜5日程度)
認知症介護実践リーダー研修とは
リーダー研修は、実践者研修を修了した人を対象に、さらに一歩進んだ内容を学ぶ機会として設けられています。現場で後進を指導したり、チーム内のマネジメントを担ったりする立場にある人が対象です。
この研修では、単にケアの質を高めるだけでなく、他のスタッフへの指導方法、評価の仕方、連携の促進方法などについても学びます。具体的には、チーム内での役割分担やコミュニケーション、事例検討の進め方など、現場における実務的なスキルを高めることが目的です。
研修はおおむね40~50時間で構成されており、5~6日ほどかけて実施されます。
目的
- ケアチーム内でのリーダーシップ発揮
- 後進育成と支援
- チームマネジメント力の強化
主な内容
- 指導者の役割と育成支援
- ケアの評価と課題整理
- チームマネジメントと連携促進
- 実践事例の共有と改善
対象者
- 実践者研修修了済み
- リーダー的立場の介護職員
期間
-
約40〜50時間(5〜6日)
実施主体と申し込み
これらの研修は、各都道府県または指定の研修機関が実施しています。日程や内容、費用は地域ごとに異なるため、希望する地域の実施要項を確認する必要があります。
募集情報は都道府県の福祉関係のホームページや、研修を委託されている団体のサイトなどで公表されています。
修了後の活用
実践者研修やリーダー研修を修了した人は、現場で中核的な役割を担うことが期待されます。特別養護老人ホームやグループホームなどでの中堅職員としての配置が想定されており、配置加算や加点評価などの対象にもなることがあります。
また、OJTや新人指導の場面で活躍するほか、地域ケア会議などにおいて認知症ケアの専門的な立場から助言を行う機会も広がると思われます。
- 特養・グループホームでの中核スタッフとして
- 認知症ケア加算の要件を満たす配置
- 新人教育やOJT支援
- 地域ケア会議などでの事例発表・支援役
おわりに
認知症ケアの現場では、知識だけでなく実践力やチームとしての連携、指導力、リーダーシップも重要になります。実践者研修やリーダー研修を受けることによって、単にスキルアップするだけでなく、チーム全体のケアの質を高める立場としても成長していくことができると思います。現場での信頼と影響力を高めるための有効な一歩になりますし、今後のキャリアを考えるうえでも、有意義な研修だと感じられるはずです。