介護分野では長年にわたり「人手不足」が大きな課題とされています。近年は処遇改善やICT導入など、さまざまな対策が進められていますが、実際に現場の状況はどこまで改善しているのでしょうか。この記事では、最新の統計データをもとに介護職の離職率・定着率の現状を整理し、今後の展望を考えます。
介護職の有効求人倍率は依然として高水準
厚生労働省「職業安定業務統計」によると、介護サービス職種の有効求人倍率は令和6年12月時点で3.49倍となっています。これは全職業平均(約1.2倍)を大きく上回る水準であり、1人の求職者に対して3件以上の求人がある状態です。
地域別に見ると、都市部よりも地方圏で倍率が高い傾向があり、とくに高齢化率の高い県では4倍を超える地域もあります。介護職の採用競争が依然として激しい状況であることがうかがえます。
令和5年度の離職率は13.1%、やや改善傾向
公益財団法人介護労働安定センター「令和5年度 介護労働実態調査」によると、介護職員の離職率は13.1%でした。これは令和4年度(14.9%)から約2ポイント改善しています。離職理由として最も多いのは「人手が足りず業務負担が大きい」(53.3%)であり、次いで「賃金が低い」(31.4%)、「職場の人間関係が難しい」(25.7%)などが続きます。
一方で「今後も介護の仕事を続けたい」と回答した職員は全体の約7割に上り、働きやすい環境づくりが進めば定着率の向上が期待できることが示唆されています。
職場の取り組み事例
- 夜勤回数を個別調整し、ワークライフバランスを改善した特養Aでは離職率が20%から10%に半減。
- ICT機器(記録タブレット・見守りセンサー)を導入した老健Bでは、記録業務時間が1日あたり40分短縮。
- 資格取得支援制度を導入した有料老人ホームCでは、職員の定着率が向上し実務者研修修了者が倍増。
定着率の高い施設の特徴
調査によると、離職率の低い(=定着率の高い)施設には共通する特徴があります。
- 人材育成方針が明確で、定期的な面談やフィードバックが行われている。
- 管理者やリーダーが職員の意見を聞き入れる文化を持っている。
- 業務分担やシフトが柔軟で、ワークライフバランスを重視している。
- 「ありがとう」が日常的に交わされるなど、心理的安全性が高い職場風土を形成している。
こうした経営者側の姿勢や意識の度合いが、離職率の差を生んでいると言えそうです。
処遇改善加算による賃金上昇
厚生労働省による「介護職員等処遇改善加算」の制度により、介護職の平均給与は年々上昇しています。厚労省資料によれば、令和5年度の介護職員の平均月給は約25.8万円(常勤換算)で、10年前と比較して4万円近く増加しました。
特に「介護職員等ベースアップ等支援加算」の導入により、令和4年度以降は賃金引き上げが継続的に行われています。職員のモチベーション維持や離職防止に一定の効果を上げているといえます。
2040年に向けて介護人材はさらに27万人不足の見通し
厚生労働省の「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」によると、介護職員の必要数は2026年度に約240万人、2040年度には約272万人に達すると見込まれています。人口減少社会の中で人材確保を維持することは容易ではなく、今後は生産性向上や多様な人材の参入促進が欠かせません。
外国人介護人材の受け入れや、定年後の再就職支援、短時間勤務制度など、多様な雇用形態の整備も進められています。また、AI・ロボット技術の導入による省力化も一部の施設で成果を上げつつあります。
テクノロジー活用の可能性
介護ロボットやAIによる業務支援は、職員の身体的・精神的負担を軽減する有力な手段として注目されています。特に排泄予測センサーや自動記録アプリの導入により、夜間巡視回数を減らしながら入居者の安全性を確保する事例もあります。人手不足を完全に解消することは難しくても、「限られた人員で質を維持する仕組みづくり」が重要な鍵となっています。
まとめ
最新データから見ると、介護現場の人手不足は依然として厳しい状況にありますが、離職率の改善や処遇の引き上げなど、一定の前進も見られます。
今後は働きやすい職場づくりとともに、テクノロジー活用・人材育成・多様な働き方の推進が、介護現場の持続性を高める重要な要素になると思われます。
参考資料
- 厚生労働省「職業安定業務統計(一般職業紹介状況)」
- 公益財団法人 介護労働安定センター「令和5年度 介護労働実態調査 結果の概要」
- 厚生労働省「介護職員等処遇改善加算について」
- 厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」

