企業の目的と役割
企業とは、私たちの身のまわりにある商品やサービスをつくり出し、提供してくれる存在です。その主な目的は「利益をあげること」ですが、他にも私たちが日々の生活を送るうえで必要なものを供給したり、働く場所を提供したり、地域や国の経済を元気にしたりと、さまざまな役割を担っています。
企業はまた、所得の分配や技術革新の推進にも貢献しています。従業員に賃金を支払うことで家計を支え、研究開発に投資することで社会全体の技術水準を高める力にもなっています。
近年では、環境への配慮や働きやすい職場づくり、地域への貢献など、社会全体への責任も重視される傾向があります。企業は私たちの暮らしを支える重要な存在であり、その役割を幅広く理解することが、経済を学ぶうえでも重要になっていると思います。
企業の種類(公企業と私企業、会社企業)
企業にはいくつかのタイプがあり、誰が出資しているのか、どんな目的で設立されたのかによって大きく分けられます。
- 公企業:国や地方自治体が出資してつくる企業で、主に公共サービスを提供しています。たとえば、水道や鉄道、郵便、電気など、私たちの生活に欠かせないインフラを担っています。日本郵便や東京メトロなどがその例です。
- 私企業:個人や民間の法人がつくる企業で、利益をあげることを目的としています。
- 個人企業:お店を一人で経営している人など、小規模なビジネスが多いです。家族経営の飲食店などが該当します。
- 会社企業:複数の人が出資してつくる会社で、中でも最も一般的なのが「株式会社」です。ほかにも「合同会社(LLC)」や「合資会社」「合名会社」など、責任の範囲や出資方法によって複数の形態が用意されています。
それぞれの企業には法律上の違いがあり、設立や運営のルール、税制面での取り扱いも異なります。
株式会社の特色と仕組み
株式会社とは、多くの人からお金を集めて設立される会社のことです。出資した人は「株主」と呼ばれ、「株式」という証明書のようなものを保有します。
この会社の大きな特徴は、「出資する人(株主)」と「経営する人(取締役)」が分かれていることです。株主はお金を出す立場であり、会社の経営は選ばれた取締役が行います。これを「所有と経営の分離」といいます。
また、株主は会社がうまくいったときに利益の一部(配当)を受け取れますが、会社が倒産した場合でも、出資したお金の範囲でしか責任を負いません。これを「有限責任」と呼びます。
株式会社は、東京証券取引所のような証券市場に株式を上場すれば、一般の投資家からも資金を集めることが可能になります。これにより大規模な設備投資や研究開発を行える反面、経営の透明性や株主への説明責任も求められます。
会社経営の仕組み
会社の経営には多くの人が関わっています。それぞれの役割は以下のとおりです。
- 株主総会:会社の最高意思決定機関で、取締役の選任・解任、定款の変更、配当の決定などを行います。
- 取締役会:株主に選ばれた取締役が会社の大きな方針を決定します。複数の取締役で構成され、重要な経営判断を議論します。
- 代表取締役:会社の「顔」として、日々の経営を取り仕切る人物で、社外との契約や意思決定を担当します。
- 各部門:営業、人事、総務、経理、技術などに分かれ、日々の業務を遂行する現場です。
近年では、ガバナンス強化の観点から、社外取締役の任命、監査役会の設置、内部通報制度の導入など、企業の透明性と信頼性を高めるための取り組みも進められています。
会社の資金調達
会社が事業を行うには資金が必要です。資金調達の方法は大きく分けて2つあります。
- 自己資本:株主からの出資や、過去の利益の蓄積(内部留保)など、返済の必要がない資金です。安定した財務基盤を築くうえで重要ですが、急速な拡大には限界があります。
- 他人資本:銀行からの融資や、社債といった有価証券を発行して集める資金で、利子の支払いや返済義務があります。企業にとっては資金調達の選択肢を広げられる一方、債務不履行などのリスクにも注意が必要です。
他に株式の新規公開(IPO)や、事業会社や投資ファンドからの出資を受ける「資本提携」も行われます。インターネットを通じて広く個人から資金を集めるクラウドファンディングも、新たな選択肢として注目されています。
企業の集中
企業は、効率の向上や競争力の強化を目的として、他の企業と合併したり提携したりすることがあります。これを「企業の集中」と呼びます。
- 水平的集中:同業種の企業が合併し、事業規模を拡大すること。例としては、大手航空会社同士の統合や、製薬会社の合併が挙げられます。
- 垂直的集中:原料の供給元や販売先など、取引関係のある企業同士が一体化すること。製造から販売まで一貫して行うことでコストを削減できます。
- 混合的集中:異なる業種の企業が統合するケースで、多角化経営を図る企業戦略として活用されます。
集中によって、コスト削減やノウハウの共有などの効果が期待されますが、競争の減少や市場独占の問題もあるため、公正取引委員会などによる監視も行われています。
企業の社会的責任(CSR)
企業には、利益の追求だけでなく、社会や環境に配慮する責任が求められるようになってきました。これが「企業の社会的責任(CSR)」という考え方です。
たとえば、
- 環境への配慮:ゴミの削減や温室効果ガスの排出抑制、再生可能エネルギーの活用など
- 働きやすい職場づくり:労働環境の改善、ハラスメントの防止、多様性の尊重
- 地域貢献:地域イベントの協力、災害時の支援活動など
- 法令順守とガバナンス:透明性の高い情報公開や、倫理的な経営
さらに、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の広がりにより、CSR活動は投資家からの評価基準にもなりつつあります。企業が持続可能な発展を目指すためには、社会との信頼関係を築く姿勢が欠かせないといえます。