ドルコスト平均法の基本的な考え方
ドルコスト平均法(英語:Dollar Cost Averaging)は、一定の金額を定期的に同じ投資対象に投資し続けることで、購入価格の平均化を図る方法のことです。リスク分散のなかの時間的分散に該当します。
たとえば、毎月1万円ずつ投資信託を購入する場合、価格が高い月は少ししか買えず、価格が安い月は多く購入できます。結果として、高値づかみのリスクを軽減し、長期的に安定した投資成果が期待できるという特徴があります。
この方法のメリットは、相場のタイミングを読む必要がない点にあります。市場が上がるか下がるかを事前に正確に予測するのはプロでも困難ですが、ドルコスト平均法では価格の変動に関係なく、淡々と投資を続けることで、価格変動リスクをある程度抑えられます。
特に、長期的な資産形成を目指す個人投資家にとっては、心理的な負担も少なく、続けやすい投資スタイルです。
数字で見るドルコスト平均法の効果
ドルコスト平均法の効果をより具体的に理解するために、シンプルなシミュレーションで確認してみましょう。たとえば、毎月1万円ずつ、ある商品の価格が以下のように変動する中で12カ月間購入を続けたとします。
月 | 商品価格(円) | 購入額(円) | 購入数量(口数) |
---|---|---|---|
1 | 1,000 | 10,000 | 10.00 |
2 | 950 | 10,000 | 10.53 |
3 | 900 | 10,000 | 11.11 |
4 | 850 | 10,000 | 11.76 |
5 | 900 | 10,000 | 11.11 |
6 | 950 | 10,000 | 10.53 |
7 | 1,000 | 10,000 | 10.00 |
8 | 1,050 | 10,000 | 9.52 |
9 | 1,100 | 10,000 | 9.09 |
10 | 1,050 | 10,000 | 9.52 |
11 | 1,000 | 10,000 | 10.00 |
12 | 950 | 10,000 | 10.53 |
合計投資額は12万円で、購入数量の合計は約123.70口です。平均購入価格は、12万円 ÷ 123.70口 ≒ 970円となります。
一方、仮に12万円を最初の月に一括投資した場合の購入数量は、12万円 ÷ 1,000円 = 120口となり、取得単価は1,000円です。この比較からもわかるように、ドルコスト平均法を用いた結果の方が平均購入価格が安くなり、より多くの口数を取得できていることになります。
このように、ドルコスト平均法は価格変動のある市場環境下でも、平均購入単価を抑えることにより投資リスクを分散し、長期的な成長を支える仕組みになっています。
ドルコスト平均法のメリットと注意点
ドルコスト平均法には多くのメリットがありますが、同時に注意すべき点もあります。
メリットとしては、
- 相場のタイミングを読まなくてよい(感情に左右されにくい)
- 資金管理がしやすく、毎月の積立として組み込みやすい
- 少額から始められ、投資初心者にも向いている
一方で、次のような注意点もあります。
- 上昇トレンドが続く相場では、初期にまとめて投資した方がパフォーマンスが高くなる可能性がある
- 購入する金融商品が長期的に成長しない場合、期待される効果が出にくい
- 下落相場では含み損を抱える期間が長くなることもある
そのため、ドルコスト平均法を実践する際は、投資対象の商品選びが非常に重要になります。投資信託などで広く分散された商品を選ぶことで、長期的な成長をより確実に狙うことができます。
一括投資との違いと選び方のポイント
ドルコスト平均法とよく比較されるのが「一括投資」です。一括投資は、一定の金額を一度にまとめて投資する方法で、相場が底に近いタイミングで行えば、高いリターンを得られる可能性があります。ただし、タイミングの見極めが難しく、価格変動の影響を強く受けるため、心理的な負担も大きいです。
一方でドルコスト平均法は、時間をかけて投資を分散することで、相場の変動に対するリスクを和らげる効果があります。長期的に見れば、相場の平均的な成長を享受しつつ、価格変動による損失を抑えることが期待できます。
選び方のポイントとしては、
- 市場のタイミングを読む自信がない場合はドルコスト平均法
- 一時的に大きな資金があり、相場が割安だと判断できる場合は一括投資
といった判断が考えられます。
リスク許容度や運用期間によって使い分けるのがよいです。