営業利益成長率は、企業の本業の利益がどのくらいの速さで増えているかを確認するための指標です。売上が伸びていても、値引きやコスト増で利益が残っていなければ、事業の拡大がそのまま企業価値の向上につながっているとは言い切れません。そこで見ておきたいのが、売上ではなく営業利益の伸びです。
営業利益成長率を見ると、企業が売上拡大と採算改善を両立できているかを読み取りやすくなります。成長企業を調べるときも、成熟企業の変化を確認するときも、売上高成長率とあわせて見ておくと、数字の意味がかなりはっきりしてきます。
営業利益成長率とは何か
営業利益成長率とは、前期と比べて営業利益が何%増えたか、または減ったかを示す指標です。計算式はシンプルで、次のように表せます。
営業利益成長率 = (当期の営業利益 − 前期の営業利益) ÷ 前期の営業利益 × 100
たとえば、前期の営業利益が100億円、当期の営業利益が120億円であれば、営業利益成長率は20%です。反対に、100億円から80億円に下がっていれば、成長率はマイナス20%になります。
この数字が示しているのは、企業の本業の収益力がどの方向に動いているかです。営業外収益や特別利益の影響を受けにくいため、事業そのものの実力を確認する材料として使われる指標です。
なぜ売上高ではなく営業利益を見るのか
売上高成長率は、事業規模の拡大をつかむうえで重要です。ただし、売上が伸びても営業利益が増えていなければ、会社にとって望ましい成長とは言いにくくなります。理由は、売上を作るために販売費や人件費、広告費、物流費などが増えすぎている可能性があるからです。
たとえば、次のようなケースでは売上だけでは実力を読み違えます。
- 値下げで売上数量は増えたが、利益率は下がっている
- 新規出店や広告投下で売上は伸びたが、費用増の影響が大きい
- 原材料高や人件費上昇で、売上の伸びほど利益が増えていない
営業利益成長率を見ると、売上拡大の裏側で採算がどう動いたかを確認できます。企業の成長が「規模だけの拡大」なのか、「収益力を伴う成長」なのかを見分けるために欠かせない視点です。
営業利益成長率からわかること
本業の収益力が強まっているか
営業利益成長率が安定して高い企業は、本業で利益を生み出す力が強まっている可能性があります。商品やサービスの競争力があり、価格設定やコスト管理も一定水準で機能していると考ることができます。
とくに、売上高成長率を上回るペースで営業利益が伸びている場合は、収益構造が改善していることがあります。固定費の吸収が進んだり、高採算の事業比率が高まったりしているケースです。
成長の質が高いか
同じ増収企業でも、営業利益成長率の見え方はかなり違います。売上が10%増えて営業利益が25%増えている会社と、売上が10%増えて営業利益が2%しか増えていない会社では、成長の質に差があります。
前者は売上増が利益に結びついていますが、後者は費用負担が重く、規模拡大の割に利益が残っていない可能性があります。営業利益成長率は、この違いを数字で確認するための材料になります。
景気やコスト変動への強さ
営業利益は、売上の変化だけでなく費用構造の影響も受けます。そのため、営業利益成長率を数年分並べると、景気変動や原価上昇の局面で企業がどの程度耐えられているかも見えてきます。
好況期には大きく伸びても、不況期やコスト増局面で急減する企業は、利益の安定性に課題があるかもしれません。反対に、環境が厳しい時期でも落ち込みが比較的小さい企業は、収益基盤がしっかりしていると考えられます。
営業利益成長率を見るときの具体例
たとえば、ある企業の業績が次のように推移したとします。
- 前期売上高:1,000億円
- 当期売上高:1,100億円
- 前期営業利益:100億円
- 当期営業利益:130億円
この場合、売上高成長率は10%、営業利益成長率は30%です。売上以上に営業利益が伸びているため、採算改善を伴う成長と読むことができます。単に売れたというだけでなく、利益率の改善や費用効率の向上も起きている可能性があります。
一方で、次のようなケースもあります。
- 前期売上高:1,000億円
- 当期売上高:1,100億円
- 前期営業利益:100億円
- 当期営業利益:95億円
こちらは売上高成長率が10%であるのに対し、営業利益成長率はマイナス5%です。売上は増えていても、本業の利益は減っています。値引き競争、原価上昇、販管費の増加などが起きているかもしれません。売上だけを見ると順調に見えますが、営業利益まで見ると評価は変わってきます。
高いほどよいとは言い切れない理由
営業利益成長率は高いほど望ましいように見えますが、数字だけで判断するのには注意が必要です。前年の利益が小さいと、わずかな増加でも成長率が大きく見えるからです。
たとえば、営業利益が5億円から10億円になれば成長率は100%です。見た目は非常に強い伸びですが、利益額そのものはまだ小さいとも言えます。反対に、500億円から550億円なら成長率は10%ですが、利益額の増加は50億円あります。企業規模によって、同じ成長率でも意味はかなり変わります。
そのため、営業利益成長率を見るときは、次の点もあわせて確認しておくのがよいと思います。
- 営業利益の金額そのものが十分にあるか
- 一時的な要因ではなく、数年続く傾向か
- 売上高成長率とのバランスはどうか
- 営業利益率も改善しているか
あわせて見たい指標
売上高成長率
営業利益成長率だけでは、利益の伸びが売上拡大によるものなのか、採算改善によるものなのかが見えにくいことがあります。そこで基本になるのが売上高成長率です。
売上高成長率と営業利益成長率を並べると、規模の成長と収益の成長を分けて考えられます。売上が横ばいでも営業利益が伸びていれば、事業の質が高まっている可能性があります。反対に、売上が大きく伸びても営業利益がついてこなければ、拡大の中身を慎重に見たほうがよさそうです。
【成長性の分析】売上高成長率とは?事業の拡大ペースを読み取る
営業利益率
営業利益率は、売上高に対して営業利益がどのくらい残るかを示す指標です。営業利益成長率が高くても、営業利益率が低下しているなら、将来の安定性には注意が必要です。
たとえば、売上規模の拡大で利益額は増えていても、利益率が下がり続けている企業は、無理な販売拡大に頼っている可能性があります。営業利益成長率と営業利益率をセットで見ることで、成長の中身がよりはっきりします。
EPS成長率
株式投資の視点では、最終的には1株あたり利益であるEPSの伸びも重要です。営業利益が増えていても、支払利息や特別損失、増資による株式数の増加などで、EPSの伸びが弱くなることがあります。
営業利益成長率は本業の実力を見る指標、EPS成長率は株主に帰属する利益の伸びを見る指標として、役割を分けて考えるとわかりやすくなります。
どのような企業で特に重要か
営業利益成長率はどの企業でも参考になりますが、とくに次のような企業では重要度が高まります。
- 成長企業として評価されている企業
- 先行投資が多く、利益の変化幅が大きい企業
- 売上拡大の一方で費用も増えやすい小売業や外食業
- 原材料価格や物流費の影響を受けやすい製造業
こうした企業では、売上の増減だけでは実力を読み切れません。事業拡大が本当に利益につながっているかを確認するために、営業利益成長率が役立ちます。
見るときの注意点
営業利益成長率を使うときは、前期の数字の特殊要因を確認しておくことも大切です。たとえば、前期に一時的なコスト増があった場合、当期はその反動で大きく改善したように見えることがあります。逆に、当期に先行投資を増やしていれば、将来に向けた支出で利益が一時的に抑えられているケースもあります。
また、単年の数字だけで判断すると、たまたまよかった年、たまたま悪かった年に引きずられます。少なくとも3期、できれば5期程度の推移を見て、伸び方に一貫性があるかを確かめたいところです。
確認したい点を絞るなら、次の順番が見やすいと思います。
- 営業利益が増えているか減っているか
- その伸びは売上の伸びより大きいか小さいか
- 営業利益率は改善しているか
- 数年続けて見たときも同じ傾向か
営業利益成長率は企業の成長の質を見る指標
営業利益成長率は、企業の本業の利益がどのくらいの勢いで増えているかを示す指標です。売上高成長率が事業規模の拡大を示すのに対し、営業利益成長率はその拡大が利益に結びついているかを教えてくれます。
売上だけを見ると順調に見える企業でも、営業利益まで確認すると評価が変わることがあります。反対に、売上の伸びは控えめでも営業利益が力強く増えている企業は、収益構造の改善が進んでいるかもしれません。
成長性の分析では、数字が大きいか小さいかだけでなく、どの数字がどの数字を支えているかを見ることが大切です。営業利益成長率は、その関係を読み解くための中心的な指標の一つとして押さえておきたいところです。
