企業の収益性を考えるとき、利益率だけでなく「どれだけ資産を効率よく使って売上を生み出しているか」という視点も重要になります。その際に用いられる指標が 総資本回転率 です。これは、企業が保有する資産全体を使って、どの程度の売上を生み出しているかを示す指標です。
総資本回転率とは
総資本回転率は、企業が保有する総資本(総資産)をどれだけ効率よく活用して売上を上げているかを見るための指標です。利益の大きさではなく、「資産の使われ方」に着目している点が特徴です。
計算式
総資本回転率 = 売上高 ÷ 総資本(総資産)
- 売上高: 企業が一定期間に得た売上の合計
- 総資本(総資産): 貸借対照表の資産合計
例えば、回転率が2.0倍であれば、「総資産1円あたり2円の売上を上げた」ことを意味します。数値が高いほど、少ない資産で効率よく売上を生み出している企業と見ることができます。
総資本回転率が示す意味
総資本回転率は、企業のビジネスモデルや経営スタイルを反映しやすい指標です。
- 在庫や設備を効率的に使えているか
- 過剰な資産を抱えていないか
- 売上規模に対して資産が重すぎないか
利益率が高くなくても、総資本回転率が高ければ、資産を回転させて収益を確保している企業と評価されることもあります。
業種による違い
総資本回転率は業種によって水準が大きく異なります。
| 業種 | 総資本回転率の傾向 | 特徴 |
|---|---|---|
| 小売業 | 高め | 在庫回転が速く、資産を回して売上を作る構造 |
| 製造業 | 中程度 | 設備投資が多く、一定の資産を必要とする |
| 不動産業 | 低め | 資産規模が大きく、売上に対する回転は緩やか |
| IT・サービス業 | 比較的高め | 固定資産が少なく、人的資本中心 |
そのため、この指標も同業他社との比較を前提に見ることが大切です。
総資本回転率と利益率の関係
総資本回転率は、利益率と組み合わせて考えることで、より立体的な分析が可能になります。
- 利益率が高く、回転率も高い → 効率性・収益性ともに高い
- 利益率は低いが、回転率が高い → 薄利多売型のビジネス
- 利益率は高いが、回転率が低い → 高付加価値・資産固定型
企業の戦略や業態によって、どちらを重視するかは異なると考えられます。
ROAとの関係
総資本回転率は、ROA(総資産利益率)とも深い関係があります。
ROA = 売上高利益率 × 総資本回転率
この分解から、ROAを改善する方法として「利益率を高める」か「資産回転率を高める」か、どちらに課題があるのかを整理しやすくなります。
総資本回転率を見る際の注意点
- 一時的な売上増減に影響されやすい
- 設備投資直後は一時的に低下することがある
- 資産売却による一時的な改善には注意が必要
単年度だけで判断せず、複数年の推移を見ることで、企業の資産活用の変化を把握しやすくなります。
おわりに
総資本回転率は、企業がどれだけ効率よく資産を使って売上を生み出しているかを示す指標です。利益率だけでは見えにくい「資産の使われ方」を確認できる点に特徴があります。ROAや売上高利益率と組み合わせながら、同業他社や時系列で比較していくと、企業の経営の姿がより立体的に見えてくると思います。

