企業の収益性を測る指標の中でも、特に注目度が高いのが ROE(Return on Equity:自己資本当期純利益率) です。ROEは、株主が拠出した自己資本に対して、企業がどれだけ効率的に利益を生み出したかを示す指標で、株主や投資家にとって最も関心の高い数字のひとつといえます。ここでは、ROEの計算方法や特徴、読み解く際のポイント、そして注意点について整理していきます。
ROEとは
ROEは、企業が株主資本をどれだけ有効に活用して当期純利益を稼いでいるかを示す指標です。企業の収益性を「株主の視点」から評価することができ、投資判断の材料として重要な位置づけになります。
基本的な計算式
ROE(自己資本当期純利益率)= 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100
- 当期純利益: 最終的な利益で、株主に帰属する利益
- 自己資本: 株主が企業に提供した資本(資本金・資本剰余金・利益剰余金など)
ROEが高いほど、株主資本を効率的に活用して利益を生み出していると考えられます。
ROEが評価される理由
ROEは以下の理由から、株主や投資家が企業を評価する際の重要な基準となっています。
- 株主の視点で利益の大きさを示せる
- 企業の収益力と資本効率をまとめて把握できる
- 企業間で比較しやすい
企業経営が株主価値の最大化を目指す以上、ROEが一定水準以上で推移している企業は投資家から評価されやすくなる傾向があります。
ROEの水準の目安
理想的なROEの水準は業種によって異なりますが、一般的には次のような水準が参考になります。
| ROEの水準 | 評価の目安 |
|---|---|
| 5%未満 | 株主資本の活用度が低い |
| 5〜8%程度 | 標準的な水準 |
| 8〜10%以上 | 安定した収益性を示す企業が多い |
| 10〜15%以上 | 資本効率の高い企業として評価されやすい |
ただし、金融業やIT企業など業種によってROEが高く出やすい業界もあるため、同業他社との比較が欠かせません。
ROEを分解して考える(デュポン・システム)
ROEは、次の3つの要素に分解することができます。これをデュポン・システムと呼びます。
ROE = 利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ
- 利益率: 当期純利益 ÷ 売上高
- 総資産回転率: 売上高 ÷ 総資産
- 財務レバレッジ: 総資産 ÷ 自己資本
このように構造を分解すると、ROEが高い理由が「利益率の高さ」なのか、「効率よく資産が回転している」ためなのか、あるいは「自己資本が少ないためレバレッジが効いている」からなのかが見えてきます。
ROEが高い企業の特徴
ROEが高い企業には、次のような特徴があります。
- 高い利益率で安定した収益を確保できている
- 資産を効率的に回転させている
- 必要以上に自己資本を積み上げず、資本構成が最適化されている
これらは企業が効率的な経営を行えているかどうかを判断するポイントにもなります。
ROEを見る際の注意点
便利な指標ではありますが、ROEの解釈には注意も必要です。
- 自己資本が極端に小さいと異常に高くなる(資本不足を意味する場合もある)
- 借入金でレバレッジをかけすぎると危険性が高まる
- 特別利益・損失の影響で単年のROEが大きく変動する
- 業種による違いが大きく、単純比較ができない
そのため、ROEは複数年の推移や同業他社との比較を通じて評価していくことが大切だと思います。
ROA・ROICとの違い
ROEとあわせてよく使われる指標に、ROA(Return on Assets:総資産利益率) と ROIC(Return on Invested Capital:投下資本利益率) があります。いずれも「どれだけ効率よく利益を上げているか」を見る指標ですが、対象とする資本の範囲と視点が少しずつ異なります。
ROA は、企業が保有する総資産全体をどれだけ効率的に活用して利益を上げているかを見る指標です。
ROA = 当期純利益 ÷ 総資産 × 100
借入金も含めた「全体の資産の使い方」を評価するため、企業全体としての運用効率を把握したいときに役立ちます。
ROIC は、事業のために投下された有利子負債+自己資本に対して、どれだけ利益(通常は税引後営業利益:NOPAT)が生まれているかを見る指標です。
ROIC = 税引後営業利益(NOPAT) ÷ 投下資本 × 100
本業のために実際に使っている資本に絞って効率性を測るため、「この事業に投資する価値があるか」を考えるときに使われます。
| 指標 | 視点 | 示すもの |
|---|---|---|
| ROE | 株主の視点 | 株主資本を使ってどれだけ利益を生んだか |
| ROA | 企業全体の視点 | 企業の資産全体でどれだけ利益を生んだか |
| ROIC | 投下資本の視点 | 事業に必要な資本でどれだけ利益を生んだか |
ROEは「株主にとってのリターン」、ROAは「企業全体の運用効率」、ROICは「事業に投じた資本の効率性」というように役割が分かれているので、目的に応じて組み合わせて使っていくのがよいと思います。
おわりに
ROEは、株主資本に対して企業がどれだけ効率的に利益を生み出しているかを示す重要な指標です。株主価値の向上が求められる現代の経営において、ROEは一つの標準的な評価軸となっています。ただし、数値が高ければ必ずしも優れた企業というわけではないため、ROAやROICとあわせて、利益構造や資本構成の背景を整理しながら見ていくことが大切となります。

