附属明細表と注記

附属明細表とは、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表に関連する補足的な情報を一覧形式で記載した書類です。企業の財政状態や経営成績の理解をより深めるために、個別の項目について明細化した情報を開示します。

これらの明細表は、会社法や金融商品取引法などに基づいて作成・提出が義務付けられており、特に大企業や上場企業においては、詳細な記載が求められます。

附属明細表の種類

附属明細表にはいくつかの種類があり、それぞれ異なる資産・負債の内容を詳細に示しています。

有価証券明細表

保有している株式や債券などの有価証券の内訳を明示します。区分は以下のようになります。

  • 売買目的有価証券
  • 満期保有目的債券
  • その他有価証券
  • 子会社・関連会社株式

銘柄ごとに取得価額、帳簿価額、時価などを記載することが一般的です。

有形固定資産等明細表

土地、建物、機械装置などの固定資産の取得・減少・残高をまとめた表です。以下の項目が含まれます。

  • 期首残高
  • 当期取得額
  • 当期減少額
  • 期末残高
  • 減価償却累計額

社債明細表

発行した社債の残高・利率・満期日などを記載します。社債ごとに条件が異なるため、一覧での開示が必要です。

借入金等明細表

金融機関などからの借入金について、以下のような内容を明示します。

  • 借入先
  • 利率
  • 借入日・返済期日
  • 担保の有無

引当金明細表

将来の特定支出に備えた引当金の増減と内訳を示します。例としては、退職給付引当金や修繕引当金などがあります。

資産除去債務明細表

工場の解体費用など、将来の資産除去に関する債務の内容と金額を明示します。見積もり方法や変動要因も注記される場合があります。

注記とは

注記とは、財務諸表では表しきれない重要な情報を補足的に記載する文章のことです。読み手にとって財務諸表の数値を適切に理解するための手がかりとなります。

注記には、会計方針や基準、会計上の変更、リスクの開示などが含まれ、法令や会計基準に従って記載されます。

主な注記事項

注記事項は企業の財務状況を総合的に理解するうえで重要です。以下に主な注記内容を整理します。

連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項

  • 連結の範囲(子会社の選定基準)
  • 連結手続きの内容(のれんの処理など)

重要な会計方針

  • 減価償却の方法(定率法・定額法など)
  • 売上の計上基準(出荷基準・検収基準など)

会計方針の変更

  • 減価償却方法の変更
  • 棚卸資産の評価方法の変更
    →変更理由と財務諸表への影響が説明されます。

表示方法の変更

  • 表示科目の統合や新設
    →前年との比較可能性に影響がある場合は説明が求められます。

会計上の見積りの変更

  • 貸倒引当金や退職給付債務などの見積り変更があれば、変更理由と影響額を開示します。

修正再表示

  • 過年度の誤りを訂正して再表示する場合の内容と影響を記載します。

重要な後発事象

  • 決算日後に発生した、企業の財政状態に重大な影響を与える事象(例:災害、合併、巨額訴訟など)

継続企業の前提

  • 財務状況が悪化して企業の継続が疑われる場合に、その旨と対応策を記載します。

セグメント情報に関する注記

  • 製品・地域別の売上・利益などの業績情報を、セグメント別に開示します。
  • 各セグメントの売上高、営業利益、資産額などを数値で示します。

おわりに

附属明細表と注記は、単に数値だけでなく、その背景やリスク、会計方針の選択理由まで記載されるため、投資家・金融機関・会計監査人など、さまざまなステークホルダーにとって重要な判断材料になります。

決算書を読み解く際には、本文の財務諸表だけでなく、こうした附属資料・注記にもしっかり目を通すことが望ましいです。