連結包括利益計算書

連結包括利益計算書とは、企業グループ全体の当期純利益に加えて、純資産に直接反映される「その他の包括利益」も含めた総合的な利益を示す財務諸表です。これは、企業の経営成績をより幅広い視点で捉えるために導入されたもので、2009年の会計基準の改正により、作成が義務付けられました。

従来の損益計算書では把握できなかった、時価評価や為替変動などによる資産評価の変動を「その他の包括利益」として取り込み、財務状況の変化をより正確に可視化することができます。

包括利益とは

包括利益とは、ある会計期間において企業が得たすべての利益を示す概念です。従来は損益計算書に記載される「当期純利益」だけが重視されてきましたが、それだけでは企業の実際の経済価値の変動を完全には反映できませんでした。

そこで導入されたのが「包括利益」という概念です。包括利益 = 当期純利益 + その他の包括利益 という関係で表され、企業のより正確なパフォーマンス評価を可能にします。

包括利益の構成

包括利益は、以下の2つの要素から構成されます。

当期純利益

これは、通常の損益計算書にも記載されている指標で、企業の主たる事業活動から得た純粋な利益を意味します。営業活動、財務活動、投資活動などの結果として算出される、伝統的な収益指標です。

その他の包括利益

その他の包括利益とは、損益計算書には含まれないが、企業の純資産に影響を与える評価差額等を反映した項目です。以下のような項目が含まれます。

  • その他有価証券評価差額金
    保有する有価証券(売買目的以外)の時価評価による差額を反映します。市場の変動によって含み損益が発生する場合、これがここに含まれます。
  • 繰延ヘッジ損益
    金利スワップや為替予約などのデリバティブ取引による損益で、将来の収益と対応させるために一時的に留保される項目です。
  • 為替換算調整勘定
    海外子会社の財務諸表を円換算する際に生じる為替差額を調整する勘定項目です。為替レートの変動による資産価値の変化を示します。
  • 退職給付に係る調整額
    年金制度などの退職給付に関する評価差額を反映します。年金債務の見積り変更や数理計算上の差異が生じた場合などに記録されます。
  • 持分法適用会社に対する持分相当額
    持分法を適用している関連会社において発生したその他包括利益の持分相当額が含まれます。関連会社の評価変動もグループ全体の包括利益に反映される形です。

連結包括利益計算書の様式

連結包括利益計算書には、以下の2種類の様式があります。

2計算書方式

この方式では、「損益計算書」と「包括利益計算書」が別々の書類として作成されます。
「損益計算書」では従来通り当期純利益までを記載し、「包括利益計算書」では当期純利益を起点に、その他包括利益の内容と合算して包括利益を算出します。

【メリット】

  • 表が見やすく、各項目が独立して理解しやすい
  • 財務報告がより丁寧で詳細になる

1計算書方式

こちらは、当期純利益とその他包括利益を一つの計算書にまとめて表示する方法です。損益と包括項目を同一表内で扱うため、簡潔に報告できるという特徴があります。

【メリット】

  • 資料がコンパクトになる
  • 包括利益までを一つの流れで把握できる

現在、日本ではどちらの方式も認められていますが、実務上は企業の開示方針に応じて選択されています。

おわりに

このように、連結包括利益計算書は、企業の実質的な経営成果をより包括的に示す重要な財務諸表として、今後ますます注目される役割を担っています。特に投資家やアナリストにとっては、企業価値を多面的に把握する上で欠かせない情報源の一つと言えます。