投資のリスクとリターン

投資におけるリスクとは

投資におけるリスクとは、予想されるリターン(投資から得られる利益)の振れ幅の大きさを意味します。振れ幅は、投資に対するリターンの上昇幅(利益方向)と下落幅(損失方向)のことをあわせた幅のことです。

投資の世界では、資産価格の変動や市場環境の変化により、期待したリターンを得られなかったり、元本を損失したりする可能性があります。一般的に、リスクが高いほど得られる可能性のあるリターンも大きくなりますが、その分、損失の可能性も増えます。

リスクは次のような複数の要因によって変化しますので、その時々でどんな要因でマーケットが動いているかを見極めることが大切になってきます

リスクの種類と主な影響

指標 説明
市場リスク 株価、金利、為替の変動による資産価値の変動
価格変動リスク 資産の価格が短期間で大きく動く
信用リスク 発行体(企業・国)の財務破綻リスク
流動性リスク 売買が難しくなる、希望価格で取引できない
インフレリスク 物価上昇による資産価値の目減り
金利リスク 金利変動による債券やローンの影響
カントリーリスク 政治・経済の変化による資産価値の変動
為替リスク 為替レート変動による外貨建て資産の評価額変動

リターンの不確実性

投資におけるリターンは確実なものではなく、市場の変動や経済の状況によって左右されます。投資を行う際には、将来的なリターンがどの程度変動する可能性があるのかを意識しておくことが大切です。

将来のことは誰にもわかりませんが、リターンの不確実性を測る目安として、次のような指標があります。

指標 説明と活用例
標準偏差
(σ)
リターンの変動幅を示す。
投資信託や株式の価格変動リスク評価
ボラティリティ
(Volatility)
価格変動の度合いを示す。
仮想通貨や成長株のリスク分析
シャープレシオ リスク1単位あたりのリターン評価。
投資信託やファンドの効率性評価
ソルティノレシオ
下方リスク(損失の可能性)に注目したリスク調整リターン。
安定したリターンを求める投資家向け。
カルマーレシオ
最大ドローダウンを考慮したリスク調整後のパフォーマンス。
長期投資の安定性を評価。

金融商品のリスク指標

金融商品には、それぞれ異なるリスク指標があります。リスク指標として、以下のものがあります。

指標 説明と活用例
VaR
(バリュー・アット・リスク)
一定の確率で、特定期間内に発生しうる最大損失額を示す。
リスク管理や資産保全戦略
β値
(ベータ値)
市場全体の変動に対する資産の感応度を示す。
株式のリスク評価、ポートフォリオの調整など。
最大ドローダウン
(MDD)
最高値からの最大下落率を示す。
投資資産の最大損失リスクの評価。
信用リスクスコア 企業や国の債務不履行(デフォルト)リスクを示す。
債券投資のリスク評価。
流動性リスク指標
(Bid-Ask Spread)
売買が困難になるリスクを測る指標。
低流動性資産(不動産・小型株)の評価。

詳細は別途説明しますが、今の段階ではリスクを判断するためのいろいろな指標があるということを頭の片隅に置いておいて下さい。


投資のリターン

リターンとは、投資によって得られる利益のことです。投資の目的は、資産を増やすことですが、そのためにはリターンの性質を理解することが重要です。

投資のリターンには、以下の2種類があります。

  • キャピタルゲイン(値上がり益):株式や不動産などの資産を購入後に売却し、価格が上昇していた場合に得られる利益。
  • インカムゲイン(収益配当):配当金や利息など、資産を保有している間に得られる定期的な収益。

キャピタルゲインはリスクは大きく短い期間で大きなリターンも得やすい傾向にあります。インカムゲインはリスクは小さいですが、期待されるリターンも小さいです。それぞれのリスクとリターンをバランスよく組み合わせることで、投資ポートフォリオの安定性を高めることができます。


リスクの分散

市場の短期的な変動に振り回されず、安定的に資産を増やせるようにするには、リスク分散が大切です。

リスク軽減のための最も基本的な戦略の一つが「分散投資」です。複数の異なる資産や市場に投資することで、特定の投資対象に依存しすぎないようにする方法です。

1つの資産が下落しても、他の資産でカバーできる可能性があり、市場や経済の変動に強いポートフォリオを構築できます。

投資先の分散

  • 資産の分散:株式・債券・不動産・コモディティ(商品)など異なる種類の資産に投資
  • 地域の分散:国内投資だけでなく、米国市場・新興国市場など国際分散投資を行う
  • 業種の分散:IT・金融・製造業など異なる業界の株式を組み合わせる

時間の分散

資産の分散と同時に、投資のタイミングを分散させることで、一度に大きな金額を投資するリスクを軽減する戦略もあります。

  • ドルコスト平均法:定期的に一定額を投資し、価格変動の影響を抑える(例:毎月3万円の投資信託購入)
  • 積立投資:長期間にわたって少額ずつ投資し、価格の高い時と低い時のバランスを取る

投資銘柄の価格はいつ上がっていつ下がるかは将来のことは誰にもわかりません。そのため資金を一度に使わず、何回かに分けて銘柄購入することで、高値づかみのリスクを減らすこともできます。

投資先と時間の2軸を意識すると、リスクを抑えながら安定したリターンを目指すことができます。


リスクの種類と影響について知識を持とう

投資におけるリスクとリターンは密接に関連しており、高いリターンを求めるほどリスクも高くなります。そのため、自分のリスク許容度を考慮しながら、適切な投資戦略を立てることが重要です。また、リスクを抑えるためには、分散投資を活用することが有効です。

投資を行う際は、短期的な値動きに惑わされず、長期的な視点を持つことが成功の鍵となります。相場は常に変動しますが、リスクの種類と影響範囲についての正しい知識を持っておくことで、値動きに振り回されることも少なくできます。

その上で自分に合った投資スタイルを見つけながら、安定した資産形成を目指していきましょう。